内省

自己中

宗教の人と結婚した韓国のおねえさん

韓国に嫁いだ親戚がいて、韓国のおねえさんと呼ばれていた。宗教にハマっちゃってね、信者同士で結婚させられるという宗教のルールで韓国の人と結婚して、今韓国に住んでいるんだよ、と教えられていた。

勘当されていた時期もあったようだが、少なくとも私が産まれるくらいには和解していたと思われる。その人は私からみて叔母にあたる人で、彼女の子ども(=私からみていとこ)とかくれんぼを一度だけした記憶がある。少し歳が離れていて、私はまだ幼稚園に通っていて、向こうは小学生だったような。顔を合わせたのはその時だけだ。

韓国のおねえさんのことを教えてくれたのは私の母親で、正確には「韓国のお義姉さん」だった。

母は「韓国のお義姉さんが義家族の中で一番いい人だった。優しいから宗教にハマっちゃったんだろうねえ。」と言っていた。

そういえば、母の親友兼幼馴染はバリバリの創価2世で、「一緒に泊まるとねえ、すごいよ。お経。」と、こともなげに言っていた。

母が亡くなった時は、創価2世の彼女に連絡するよう、私は聞かされている。

母がゲテモノ喰いなのか、母の世代が新興宗教と近いのか。

母が通っていた整体は、経営トップの人が幸福の科学の人で、待合室には「ヘルメス・エンゼルズ」が置いてあるのが常だった。

支店によって信者度はまちまちで、金田一の作者が描いた漫画類を一通り揃えているところもあれば、申し訳程度に小冊子を置いているところもあった。

一番覚えているのは、死後の世界を描いた絵本だ。人は死んだ後、自分の人生を振り返させられる。自分や、自分の家族と一緒に、自分の一生を見返す、というものだ。

小学校高学年でオナニーを覚えていた私は、こんなの怖すぎる、見られたくない、本当に勘弁してほしいと強く思ったことを覚えている。

一度、強く勧誘されて、集会に家族で参加させられたことがある。しかし、罰当たりな我が一家は経が書かれた聖典?を忘れていった。

例に漏れず宗教の人は親切なので、「自分達は暗記してるから。」と聖典?を貸してくれて、その場はなんとかなった。我々は罰当たりなので、「暗記してるの怖い〜」みたいなことを帰り道で話した。集まりに行ったのは後にも先にもその一回だ。

私が中学生くらいの時、親戚の集まりに韓国のおねえさんとその旦那さんが出席している時があった。旦那さんは日本語がわからないので、韓国のお姉さんが通訳をしていた。2か国語を話せるのはすごいなあとぼんやり思っていた。彼女に関する記憶はそれくらいだ。

それからまたしばらくして、一つの訃報が飛び込んできた。いとこ、つまり韓国のおねえさんの子どもが自殺したというのだ。就職先も決まっていたというのに、ホテルで首を吊っていたところを発見されていたらしい。

忙しいお盆時期、わざわざ分家のうちにも立ち寄ってくれた面倒見のいい親戚のおばちゃんはそのことを告げると、眉根を寄せて「なんでだろうね…わからないね…」とずっと繰り返していた。

私は小さい頃に一度会ったきりなので正直なところかなり他人事ではあったが、知っている人が自殺するというのはそれなりに衝撃があった。自殺の原因なんて一つじゃないだろうし、理由は誰にも分からないだろう。

わからないからこそ、元来野次馬根性が旺盛な私は韓国のおねえさんがハマった”宗教”について少し調べてみようという気になった。

「宗教 信者 結婚」とかなり雑な検索にも関わらずすぐそれらしき宗教がヒットした。

私が想像していたよりも、強大で生活に根付いている宗教なのだと分かり、気が遠くなった。

過日起こった元総理の銃撃事件をきっかけに、某宗教の注意喚起が溢れるようになった。

以前は、「親戚の集まりに顔出してるわけだし脱会してるんだろうな」と思ってはいたが

犯人自身の生い立ちに迫る記事や、統一教会に関する特集を読めば読むほど、やっぱ抜けられていないんじゃないか?という疑問もある。

彼らが語る厳しいお布施や、祝福二世に課せられた不自由や、教えによる孤立が事実なら、韓国のおねえさんの家庭もそうだったのだろうか。

親戚たちはどう見ていたのだろうか。私は何も知らなかったし、知る必要はなかったんだろう。

父が死んでから、父方の親戚との付き合いもなくなったので、父の姉である韓国のおねえさんが隣国でどのように暮らしているかはわからない。こうやって想いを馳せるのでさえ野次馬根性以外の何者でもないけど連日統一教会の文字を見るとどうしても思い出してしまう。

思い出したところで語る場もないのでここに。